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非歯原性歯痛

虫歯や歯周病など、炎症が起きて歯が痛むことはありますが、歯に異常がなくても歯が痛む「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」というものがあり、歯の痛みを訴えて歯科医院を受診した人のおよそ3割が、非歯原性歯痛だと言われています。
今回は非歯原性歯痛についてご紹介します。

非歯原性歯痛の原因

筋・筋膜性歯痛

筋・筋膜性歯痛は、食べ物を噛むときに使う咀嚼筋(そしゃくきん)や首の筋肉と、これらの筋肉を覆う筋膜の痛みが原因で起こるといわれており、痛みの原因から離れた場所が痛くなることを関連痛といいます。この筋・筋膜性歯痛は、非歯原性歯痛の全体の約7割を占め、睡眠中の歯の食い縛りや、硬い食べ物をよく食べる人に起こりやすく、その他にもパソコンを長時間見続けたりする人がなりやすいと言われています。

神経障害性歯痛

神経障害性歯痛は、神経障害性からくるズキズキとした痛みが原因で起こる歯の痛みで、発作性神経痛と持続性神経痛の2つのタイプがあります。発作性神経痛は、三叉神経や舌咽神経の痛みが原因で起こる激痛で、上顎や下顎の奥歯付近に痛みを感じることが多く、ツーンとするような痛みと感じたり、瞬間的に電気が走るような痛みと表現されます。

痛みは長くは続かず、激しい痛みとなる前に歯がしみるなどの普通の歯痛が感じられることもあります。持続性神経痛の代表的な原因として、帯状ほう疹やその後遺症による神経痛があり、帯状ほう疹性歯痛とも呼ばれています。これは神経節と呼ばれる部位に潜伏していた帯状ほう疹ウィルスの感染症で、難治性疼痛のひとつと言われています。

神経血管性歯痛

片頭痛や、群発頭痛の症状の一つとして歯痛が生じる歯の痛みを神経血管性歯痛と言います。頭痛による関連痛とも言うことができ、最も身近な神経血管性頭痛が片頭痛です。

上顎洞性歯痛

上顎の骨の中にある副鼻腔の空洞に、炎症や腫瘍があって起こる関連痛です。副鼻腔は風邪などでも炎症を起こすことがあるため、鼻からの影響で起きている上顎洞疾患の治療は耳鼻咽喉科が行います。

心臓性歯痛

狭心症や心筋梗塞、心膜炎などの心臓の病気が原因で起こる関連痛で、狭心症や心筋梗塞などの病気に関連した歯痛が多く報告されています。動脈解離や心膜炎から歯痛が生じた例もあり、痛みは発作性で、歩行などの運動により歯痛が生じるといったケースもあることから運動との相関関係が認められています。

精神疾患などによる歯痛

統合失調症や、うつ病において身体への症状として歯痛が生じることも分かっており、不安や気分が落ち込むなどの、心理社会的要因が背景にあって起こる歯の痛みです。

特発性歯痛

中には、さまざまな検査をしても原因不明の歯痛があり、これを特発性歯痛と呼びます。歯原性歯痛でも非歯原性歯痛でもなく、どの分類にも明確に当てはまらない歯痛で、時間が経過することによって症状が変化し、内容が明らかになるケースもあります。その他にもさまざまな疾患により生じる歯痛があり、巨細胞性動脈炎や悪性リンパ腫、肺がんなどの病気が原因で起こる歯痛もあります。

一般歯科で治療が可能な「筋・筋膜性歯痛」の治療

非歯原性歯痛の原因の中で、一般歯科において治療が可能なのは「筋・筋膜性歯痛」の場合です。これは前章で述べた通り、側頭筋や咬筋(こうきん)など、ものを噛む咀嚼筋や、首の筋肉、さらに、その筋膜の痛みが原因で起こる関連痛で、筋・筋膜性歯痛の多くは、ストレスや歯ぎしり、歯の食いしばりなど、筋肉の緊張状態が原因で起こります。

このような良くない習慣を自覚し改善していくところから治療は始まります。まず歯ぎしりや歯の食いしばり、上下の歯をずっとくっつけている無意識の習慣や、頬の内側を噛んだり、硬いものばかり食べたり、長時間にわたってガムを噛むなどの癖は、意識して直していく必要があるでしょう。睡眠中や日中、無意識に歯ぎしりをしたり、歯を食いしばる癖があると指摘されたことがあるのであれば、歯科医院でマウスピースを作ってもらい、睡眠中に着用することで予防ができるでしょう。または硬いものを好み、多く食べていた方は、硬いものばかり食べ過ぎないことも大切で、顎を休ませる時間を確保してあげましょう。

この他にも長い時間、同じ姿勢でパソコン作業をしていることが原因で筋・筋膜性歯痛になる患者さんも多くいます。長時間パソコンに向かう仕事をされている場合は、休憩を挟んでストレッチをしたり、頬をマッサージしたりすることが予防に繋がるでしょう。またうつ伏せの状態や布団や枕に顎がついた状態で寝る姿勢も、あごや筋肉に負担がかかるため控えた方が良いでしょう。歯科医院では、痛みを抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬などの痛み止めを処方したり、補助的に筋弛緩薬を使用する場合もあり、トリガーポイント(痛みを感じる圧痛点)に局所麻酔や炎症を抑えるためのステロイドを注射する場合もあります。

その他にも痛みを軽減させるために、理学療法の効果が期待できると言われています。痛みがある部分の筋肉の部分に温かいタオルを当てたりなど、ホットパックを使って血流を良くしたり、指で軽く揉みほぐしたりします。口の開閉を繰り返すお口周りや顎のストレッチなども効果的ですが、痛みが強い場合には無理に行わない方がいいでしょう。

その他の非歯原生歯痛はどこで診てもらえば良い?

非歯原性歯痛の領域は、近年「口腔顔面痛」としてまとめられており、診断や治療の指針となるものが報告されています。しかし未だ不明の部分もあり、今後の専門家による研究の進展が望まれていることから、非歯原性歯痛の治療は、専門の医療機関で行なった方がいいでしょう。

歯肉や粘膜に知覚異常があれば、疼痛専門医のペインクリニック、副鼻腔の炎症や腫瘍によって異常が起こった場合は耳鼻科、頭痛などから起こった痛みは脳神経外科、非歯原生歯痛が起こった方に心臓疾患がある場合は、内科・循環器内科へ、もし心臓疾患がない場合は心療内科を受診されるといいでしょう。

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