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矯正治療中に同じ歯医者で虫歯治療できない理由

矯正治療では、矯正装置を歯列に装着することで歯を正しい位置に動かしていくため、虫歯や歯周病などの口腔内疾患に罹患していないかどうか、事前に精密検査をおこない確認します。その際、虫歯や歯周病が見つかれば先に治療することが矯正治療の前提になります。ただし、矯正治療中は装置を装着していることから、特に虫歯のリスクが高くなる傾向にあるのですが、もしも矯正治療中に虫歯に罹患してしまった場合は「同じ歯科医院で健康保険を使って治療することができない」のです。今回、なぜ同じ歯科医院で治療することができないのかをご説明いたします。

矯正治療中に同じ歯医者で虫歯治療できない理由

日本において、歯科医療は「保険」が適用されます。そのため、歯の健康に繋がる虫歯や歯周病などの治療は保険が適用されるので、患者さんは治療費用の一部のみを支払うだけで済みます。それに対して矯正治療はというと、歯並びや噛み合わせの乱れも虫歯や歯周病のリスクを高める要因になるなど、様々な健康面への影響も大きいのは事実です。しかしながら、一方で「見た目を改善する」という審美性の要素も多く含まれていることから、矯正治療は保険適用外治療(自由診療)とされているのです。ここで問題になるのが、「矯正治療中の虫歯」です。

保険が適用される日本の歯科医療では、保険適用治療と保険適用外治療を同時におこなうことは「混合診療」と呼ばれており、「健康保険法違反」に該当するのです。つまり矯正治療中に健康保険を使って虫歯治療や歯周病治療を保険請求すれば不正請求となってしまう恐れがあるのです。このような理由から保険適用外である矯正治療を受けている期間中に、保険適用が可能な虫歯治療や歯周病治療をおこなうことは混合診療となるため、同一歯科医院で治療ができないというわけです。これは、たとえ別の日にずらしたとしても、同じ歯科医院では虫歯治療をおこなうことはできません。ただし、保険を適用せずに虫歯を治療する場合においては、同じ歯科医院でも矯正治療中におこなうことが可能ですが、費用は「全額自己負担」になりますのでご注意ください。

矯正治療中は虫歯に罹患しないように注意しましょう

虫歯予防

矯正治療方法の中でも、ブラケットとワイヤーを歯に装着する「ブラケット矯正」は、治療期間中は装置を取り外すことができません。そのため、どうしても装置周辺に汚れが溜まりやすくなります。また装置があることでブラッシングもしづらくなるので、清掃率の低下を招くことから、虫歯のリスクが高くなってしまいます。その点、インビザラインなどの「マウスピース矯正」は、装置がマウスピースなので治療中に取り外すことができます。取り外すことにより普段通りに歯磨きできるため、装置があるゆえに虫歯のリスクが高くなるということはあまりありません。ただし、インビザラインでは歯の動きの精度を高めるために「アタッチメント」という突起を歯の表面に取り付けるのですが、このアタッチメント周辺に汚れが溜まりやすくなります。さらに、セルフケアが不十分であったり装置をしたまま飲食することで、歯と装置の間で細菌が繁殖してしまいます。それにより、虫歯のリスクが高くなる可能性があります。

しかし矯正治療中に虫歯に罹患した場合は、前述した通り同じ歯科医院で治療することができません。ですので、その場合は別の歯科医院での虫歯治療が必要になります。ただし装置が虫歯治療の妨げになってしまったり、虫歯箇所を削ることで装置が合わなくなったり、噛み合わせが変化する可能性があります。これらは矯正治療の長期化に繋がる原因になるだけでなく、場合によっては再度装置を作製しなければならなくなるケースに繋がる可能性もあり得ます。その場合、患者さんの身体的負担は大きくなりますし、当然ですが費用もさらにかかるので経済的負担も大きくなります。これらのことを踏まえて、矯正治療中は虫歯に罹患しないよう普段から丁寧に時間をかけてブラッシングすることはもちろんのこと、タフトブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスなどの清掃補助用具を併用したセルフケアを徹底しましょう。それに加えて、定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受けて口腔内の歯垢や歯石をキレイに除去し、口腔内を清潔な状態に保つようにしましょう。

まとめ

矯正治療は保険適用外治療となるため、どうしても費用は高額になります。ただし、歯並びや噛み合わせがキレイに整うことにより、歯を失う原因である虫歯や歯周病のリスクを軽減させることができるので、結果、生涯的な歯科医療における治療費用を大きく抑えることに繋がります。さらに、しっかり噛むことで消化器官の負担を軽減したり、高齢者においては認知症の予防に効果が期待できるなど、全身の健康にも様々なメリットがあります。この矯正治療を成功させるためにも、計画通りに治療を進めていくことが重要になるのですが、矯正治療中の虫歯は同じ歯科医院で治療することができないので、計画通りに治療が進まず、治療が長期化したり、費用の負担が大きくなる可能性があります。これらを未然に防ぐためにも、日々の正しいセルフケアと歯科医院での歯のクリーニングを徹底しましょう。

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