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抜歯した歯の冷凍保存(再生治療)

矯正歯科治療のために抜いた歯や、親知らずなどを冷凍保存することで、自分の抜いた歯(抜去歯)をリサイクルできるのはご存知ですか?
例えば将来、自分の歯を虫歯や歯周病で歯を失った際に、抜いて冷凍保存していた歯を移植したり、病気を治療するための再生医療にも使えます。また万が一の時、DNA鑑定に利用することも出来るのです。

Contents

歯の冷凍保存とは

抜歯した歯は、従来は医療廃棄物として処理されていましたが、近年では医療の発達により、抜歯した歯を液体チッソの入ったタンクの中で冷凍保存し、移植・再生治療・DNA鑑定などに活用できるようになりました。歯を保存出来ることから、「ティースバンク」(歯の銀行)とも言われています。しかし誰でも歯を預けられる訳ではないため、歯を抜く前にまず血液検査を行います。その検査で感染症の有無をチェックし、保存(移植)に適合しない疾病等を持っていないかどうかを確認します。
保存が出来ないケースは、重度の歯周病を患っていたり、喫煙者、薬物中毒者、アルコール中毒者も不適合となり、その他に重度の全身疾患、糖尿病や肝臓病、骨形成不全、骨粗しょう症、血液疾患、放射線治療などをお持ちの方は歯の保存が出来ないので注意が必要です。

歯の移植

抜歯を余儀なくされた歯の代わりに、冷凍保存していた歯を代用することをいい、歯根膜や歯髄細胞が生きていることが必須条件のため、冷凍保存が必至となります。冷凍保存しておいた歯を移植するメリットは、歯と歯槽骨の間にある歯根膜が再生され、歯根膜はモノを噛んだ時にクッションの役割を果たすことから、自分の歯で噛んでいる感覚が戻ってくるという点と言えるでしょう。しっかりと埋め込まれた安定感に、噛み応えのある歯を作ることが出来、且つ移植にかかる費用は、入れ歯やインプラントなどと比較すると低価格で行えます。

再生医療

歯を冷凍保存することにより、歯の幹細胞を活用して難病を治療できる可能性があります。神経難病であれば、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷などが挙げられ、骨や軟骨の疾患の場合は、骨折、骨粗しょう症、じん帯断烈、歯周病、関節症などがあります。その他にも、筋ジストロフィーなどの筋疾患や肝疾患、火傷などにも役立つ可能性があります。さらに今後、研究が進めば親子・兄弟姉妹間でも移植や再生医療に活用できる可能性があると言われています。

DNA鑑定

万が一が起こった際に、保存していた歯からDNAを採取して、本人様確認や親子鑑定が可能です。また特殊な冷凍保存であるため、半永久的な保存が可能で、同じ血液型であれば、親子、兄弟・姉妹間でも活用することができます。

再生医療とは

再生医療とは、事故や病気によって失われた身体の細胞、組織、器官の再生や機能の回復を目的とした医療のことを言います。自分の臓器・組織の中にある幹細胞を使って、組織や臓器、器官を再生させることが出来れば、臓器移植等で生じる免疫的な拒絶反応が起こらず、癌に発展する心配もありません。またドナー不足などの問題も解消することが出来たりと、自己再生能力を最大限に活かし、負担を和らげることのできる無限の可能性を秘めた革新的な医療といえるでしょう。

抜歯した歯の冷凍保存の流れ

抜歯した歯は冷蔵で24時間以内に、再生医療研究所まで安全に届けます。研究所に到着したその後は、実体顕微鏡で歯の歯根膜などの状態を検鏡し、歯のデジタル画像を将来に備えて記録します。問題がなければ、グリーンルーム内の更にクリーン度が高いクリーンベンチで、抜歯した歯を冷凍保存するための、適切な前処理を行い、完全密封型の特殊なプラスチック容器に歯を封入し、マイナス196℃の液体チッソの入ったタンクの中で保存します。保存する歯はデータ管理され、歯の保存IDカードが個人に向け発行されます。

歯の冷凍保存の費用

冷凍した歯の保存可能期間は半永久的と言われており、保存期間によって費用も変わってきます。保存できる歯は、一人最大8本までで、最長40年間の保存が可能です。一本あたりの金額は、地域や歯科医院によっても変わってきますが、10年保存した場合で、だいたい9万円前後と言えるでしょう。さらに10年、期間の延長を希望するのであれば別途3万円前後必要になってきます。

この金額の中には、歯の冷凍保存および治療のための輸送費用、歯の冷凍保存にかかる全ての費用(検査料、冷凍保存料、試薬代、輸送および保存容器代、保存処置料)、画像撮影料とデータ保存料、歯の保存IDカード発行料、歯の冷凍保存に関する相談料が含まれています。また、2本以上保管される場合、優待制度を設けている歯科医院もあるようなので、保存する際は相談されてみるといいでしょう。

将来、歯に何か起こったときのために、健康な抜去歯を保存しておくことは、非常に意味のあることだと思います。例えば虫歯や歯周病が原因で抜歯した後に、入れ歯やインプラントでなく、冷凍保存していたご自分の歯を活用できるということは、自分の歯ならではの、噛み心地を実感できることでしょう。また、今後のさまざまな病気に備え、保険のつもりでご自分の歯を捨てずに保存しておくのもおすすめです。

移植や再生医療には親子・兄弟姉妹間で血液型が一致した場合は活用できる可能性もあります。さらに、お子さまの乳歯も再生医療に活用できる可能性があり、身体の弱いお子さまなど、乳歯を保存しておくのも良いでしょう。

※情報、費用は一般的な目安であり、医院・施設よって内容が違う場合があります。

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