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歯周病と認知症の関係

日本人の成人の約80%以上が歯周病にかかったことがあると言われています。歯周病とは、歯周病菌に感染することによって引き起こされる炎症性の病気です。お口の中の清掃が行き届かないと、歯と歯肉の隙間に細菌が溜まり、それが炎症を起こし、やがて歯肉や歯槽骨を溶かしはじめます。土台を失った歯はグラグラとグラつくようになり、最終的には抜け落ちてしまうことも多くあります。
現在、日本人が歯を失う原因のおよそ半数は「歯周病」が原因だと言われています。
歯周病の問題点は、単に歯を失うだけではありません。歯周病の原因菌や、炎症によって生じた物質が、血管や食道などを通り、身体のさまざまな箇所に送り込まれいきます。その結果、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)や血管の病気、また糖尿病やメタボリックシンドロームなどと言った、さまざまな病気の原因や悪化要因になっていることがわかっています。

歯周病を放置すると認知症になる?

認知症や認知機能の低下には、さまざまな因子が関係していると言われています。そのなかでも近年注目を集めているのが、「歯やお口の機能」と「認知症の関係」です。予防はもちろん、認知症の進行を抑える意味でも「お口の健康」は無視できないとされます。

年を重ねていくにつれ、お口の中にはさまざまなトラブルが発生します。その中で代表的なものが「歯周病」です。歯周病はさまざまな病気の原因や悪化要因になっていると言われており、その一つに「認知症」が挙げられます。

認知症の原因となる病気はいくつもありますが、最も患者数が多いのが「アルツハイマー病」です。アルツハイマー病とは、短期記憶などを司る脳の「海馬」という部分などを中心に、大脳全体に萎縮が起こる病気です。

認知症と歯周病の関係については、2013年に海外の研究でアルツハイマー病の患者の脳から歯周病の原因菌である「Pg菌」が見つかりました。

アルツハイマー病の患者10名の内、4名の患者の脳からPg菌が見つかり、同じ年齢で認知症ではない10名の脳からは全く検出されなかったという研究結果が出ました。

その後、国内外でマウスを使って歯周病菌の認知機能への影響を調査するさまざまな研究が行われました。予め、マウスをアルツハイマー病に罹患(りかん)させ、「歯周病菌を投与する群」と、「歯周病菌を投与しない群」に振り分けた結果、「歯周病菌を投与したマウス群」は、そうでないマウスに比べて「認知機能が低下」したり、「脳内にアルツハイマー病特有の炎症や老人斑が認められた」という結果報告が相次いで出てきました。さらに、こうしたアルツハイマー病特有の脳の異常を引き起こすと考えられる物質が、歯周病菌から作られている可能性があることもわかってきました。

なぜ歯周病が認知症と関係があるのかというと、認知機能の低下に影響を与える口腔内の要因として、「歯周病菌の脳内感染」が挙げられます。また歯周病による「脳の炎症」「糖尿病の悪化」「脳血管の障害」「酸化ストレスの増加」「歯の喪失」「咀嚼力の低下」「食事、会話の意欲の低下」などが認知機能を低下させ、認知症を誘発すると考えられます。

歯周病の予防法は?

歯周病とは、口腔内にある細菌の感染によって引き起こされる慢性の炎症性疾患です。歯周病は、細菌によって歯肉に炎症を引き起こし、やがて歯を支えている顎の骨を溶かしていく病気です。歯と歯肉の境目の清掃が行き届いていないと、そこに多くの細菌が停滞し、歯肉が炎症を起こして赤くなったり、腫れたりします。しかし、ほとんどの場合、痛みを感じることは少ないです。

歯周病が進行すると、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなります。そうすると、歯を支える土台となる顎の骨が溶けて歯がぐらつくようになり、歯を抜かなければいけないほどまでに症状が進行することも多くあります。

口腔内には約500種類の細菌がいて、不十分な歯磨きや砂糖の過剰摂取などが原因で、細菌がネバネバした物質を作り出し、歯の表面にくっつきます。これを「プラーク」(歯垢)と言います。プラークは粘着性が強く、歯に付着すると、口をゆすぐ程度では落ちません。さらに放置すると硬くなり、「歯石」と言われる物質に変化し、さらに強固に付着します。また歯石は歯磨きでは取り除くことが出来ず、歯石の中や歯石の周囲にも細菌が入り込み、歯周病を進行させる毒素を出します。また、食習慣や喫煙、ストレス、全身疾患、薬を長期に渡り服用している場合、その薬の副作用などは、歯周病を進行させる要因の一つとなります。

さらに、歯肉の炎症が全身に多くの影響を及ぼすことが明らかになっています。「狭心症」「心筋梗塞」「脳梗塞」「糖尿病」「誤嚥性肺炎」「骨粗しょう症」などの病気との関連性が明らかになっており、生活習慣を見直し、歯周病を予防することが、全身の生活習慣病を予防することに繋がると考えます。

歯周病は痛みなどを感じることがなく、自覚症状をほとんど伴いません。そして、放置すれば悪化こそすれ、決して自然には治りません。歯周病は、基本的に薬や外科処置で治すものではなく、ご自身が適切な歯磨きを行うことで予防・治療できる病気です。歯周病を予防することで、あらゆる全身疾患の予防に繋がると考えます。今回のテーマである、「認知症の発症の予防」や、「進行」を遅らせるカギになるとも言えるでしょう。

歯周病の一番の予防法はプラーク(歯垢)の除去そのものです。一部の歯磨き剤に殺菌作用を挙げているものもありますが、あくまでも歯ブラシなどでプラークをしっかり除去した後の補助的なものと考えると良いでしょう。歯周病は、自覚症状がないため、気付いた時には手遅れで何本も歯を抜かなければならないようなことになりかねません。たとえ今は虫歯がなくても、痛みがなく食事するのに不都合がなくても、予防のために大分県のクリニックに通い、歯のクリーニングを行われることを推奨します。

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