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嚥下障害

「嚥下(えんげ)障害」というワードを聞いたことはありますか?

嚥下障害とは、食べ物を上手に飲み込めない状態のことを言います。そのため、食事が苦痛になったり、食べる楽しみが減ってしまいます。嚥下障害を患うことで栄養が足りなくなったり、脱水を起こしてしまったり、食べ物が喉に詰まって窒息するといった危険があります。さらにこれだけでなく、放っておくと高齢者の命を脅かす病気「誤嚥性肺炎」を引き起こす原因にもなります。

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嚥下障害の症状

食事中にむせる

特にむせやすいのは、味噌汁やお茶などの水分、または水分と固形物の入り混じった食べ物です。そのような食べ物を避けようとすると、必然的に水分が多い食べ物が減るため脱水につながります。

固形物を噛んで飲み込めなくなる

硬い食べ物などの固形物は、よく噛まないと飲み込めないため、麺類などの柔らかいものや、比較的噛まずに食べられるものを好むようになります。その結果栄養が偏り、低栄養につながることが考えられます。

食事をすると疲れたり、あるいは最後まで食べきれない

固形物を噛んで飲み込めなくなることで、咀嚼に時間がかかったり、飲み込めたとしても口腔内に食べ物が残ったりするため、食事に時間がかかるようになります。

また食べられるものも制限され、食事の楽しみが奪われます。したがって食べる意欲が低下し、場合によっては食事の途中で肉体的・精神的に疲れ、食事を最後まで食べきれないこともあります。

食事の後、声がかれる

声質が変化することも、よく見られる症状のひとつです。食べ物を飲み込んだあとに声がかすれたり、口腔内に食べ物が残り痰が絡みやすくなって、ガラガラした声になったりすることがあります。

体重が減る

食べる量が減るため必然的に体重も落ちてくる可能性があります。また食事内容が偏るため、低栄養状態になって体調を崩しやすくなり、体重が落ちることも考えられます。

嚥下障害の原因

高齢者の嚥下障害は何が原因で起こるのでしょうか?

食べ物が咽頭、食道、胃まで運ばれるには多くの器官が関わっており、嚥下障害はこれらの器官が何らかの理由で上手く働かないことが原因で起こります。一つは「器質的原因」です。口から胃まで食べ物を通過する器官の構造に問題があり、うまく胃まで食べ物を送ることができなくなるケースです。中でも多いのは、口内炎や喉頭がんによる腫瘍、炎症などです。

そして二つ目に「機能的原因」があります。これは器官の構造そのものには問題がなく、それらを動かす筋肉や神経に問題があって嚥下機能が衰えるケースです。運動麻痺や認知機能障害を引き起こす「脳卒中」や、「パーキンソン病」に代表される神経と筋肉の伝達異常が生じる「神経筋疾患」が原因の可能性があります。精神科で処方される薬や鎮静剤といった薬剤の影響で各器官の働きが低下することもあります。

また加齢により咀嚼や嚥下に必要な筋力が衰えてしまうのも、機能的原因の一つです。
そのほかにも、うつ病などによる食欲不振など、心因性の疾患が嚥下障害を引き起こす「心理的原因」もあります。

嚥下障害かなと思ったら

まずは、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、神経内科、消化器科、歯科、歯科口腔外科、などを受診することをおすすめします。

医学的には、鼻からチューブを入れて胃に直接栄養を流し込む方法や、「胃ろう」という穴を胃に空け直接栄養を流し込む方法で嚥下障害の方の命を安全に維持することができます。

嚥下障害と診断された場合、誤嚥のリスクもあるため、食事方法には注意する必要があります。食事方法のポイントは、食事に集中できるよう、テレビを消すなどして環境を整えることが大切です。そして食事を始める前に、手・口・喉がきれいであるかを確かめると良いでしょう。口腔内をきれいにすると誤嚥性肺炎が減ると言う研究結果もあります。

さらに食べる前に準備体操と呼吸訓練をするとなお良いです。食事の際はよく噛んで味わいながらゆっくり食べるように指導し、食事の時間を決めて1日のリズムをつくっていきましょう。食後は必ず歯を磨き、口と喉を清潔に保つことが非常に大切です。口や舌の動きが悪かったり、感覚の低下があったりすると口腔内の汚れはひどくなります。その理由は、食べ物などが口の中に残っているとわかっていてもうまく飲み込めなかったり、感覚が麻痺していて食べ物が残っていること自体気づかないためです。また入れ歯があると、歯と歯の間や入れ歯と歯肉の間に食べ物が残りやすくなります。

このような状態を放置しておくと細菌が繁殖して、歯や歯茎に歯垢がつきます。舌にも舌苔がついてしまい粘膜は炎症を起こしてしまいます。そうすると口臭きつくなり、食べ物の味が悪くなったりもします。それだけでなく、口の中がいつも粘りついていて不快な気分になります。

嚥下障害は、高齢者であれば誰にでも起こり得る障害です。

対策は、食前と食後に必ず口腔ケアを行うことに尽きると思います。食後にお茶や白湯を飲む習慣は口の中をきれいにする役割があり、同時に喉もきれいになります。しかし、これだけなく歯ブラシやデンタルフロス、あるいは歯間ブラシを用いてしっかり口腔ケアを行い口腔内全体を清潔に保つことを心がけましょう。

嚥下障害の症状が見られたら、信頼できる医師の元へ相談に行くことをお勧めします。

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