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子供の口腔習癖(指しゃぶりなど)の影響

はじめに、口腔習癖(こうくうしゅうへき)とは、日常生活の中で無意識に行っている口腔に関連した習慣行動のことをいいます。

子供の口腔習癖は様々で、指しゃぶりや爪噛み、歯ぎしりや口呼吸の他にも、唇を噛んだり吸い込もうとする咬唇癖(こうしんへき)や、舌を歯列の間に入れて弄んだり咬んだりする弄舌癖(ろうぜつへき)、タオルや毛布しゃぶり、頬づえなどといった癖が挙げられます。これらは歯並びや噛みあわせに影響を与えるだけでなく、成長発育期の咀嚼(そしゃく)や、食べ物を上手に飲み込めない嚥下障害(えんげしょうがい)、発音や呼吸などに悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。その他にも、子供の情緒に関係する神経性習癖と呼ばれるものもあります

原因も様々で、精神的な要素であったり、生活環境などがあります。子供の心理的な問題や性格とも関係し、親の過干渉や溺愛、核家族化、母親の就業、子どもの遊び場が少ないなど生活環境や社会環境が影響していることも多くあります。また口腔習癖が発育期に長く続いてしまうと、あごや歯並びに悪い影響が出る可能性があります。

指しゃぶりについて

口腔習癖の中でも、指しゃぶりは代表的な口腔習癖です。この指しゃぶりは、実は母親の胎内にいる時から始まっていると言われており、母乳を吸うための本能に結びつくものと考えられます。

指しゃぶりは、発達過程においての一つの現象であり、1~2歳くらいの子供に多くみられます。よく泣く子は指しゃぶりが少なく、あまり泣かない子が指しゃぶりをする傾向にあります。指しゃぶりは、自然に解消するものなので、あまり心配しなくても大丈夫です。また無理にやめさせようとすると、他の癖に移ってしまうこともあるので好ましくないでしょう。

この指しゃぶりは、親の愛情不足や放任など、我慢の象徴とも言われています。苦しい気持ちであったり、悲しい気持ちが出そうになるのを、お口のところで無意識にブロックしているようです。このような時は、癖の原因となっている気持ちをスッキリさせてあげないと指しゃぶりは解消しないでしょう。2歳以下の子供であれば問題にしなくていい生理現象ですが、寂しかったり、かまってもらえない状態が続くと癖が取れるまで長引いてしまいます。

2歳から4歳は指しゃぶりが一番取れやすい時期になります。この時期に一緒に楽しく遊んだり、よく話を聞いてあげることで、指の存在を忘れさせるようにし、無理矢理やめさせないことが重要です。しかし、4歳を過ぎると癖になってしまうことがあります。本人に自覚をさせ、子供が自分で行動を意識するようにしましょう。これが6~7歳頃になっても、まだ指しゃぶりがやめられない状況であると、明らかに悪影響が出てしまいます。小学校に入るまでには確実に治しておくことが望ましいです。この頃まで指しゃぶりの習慣が続いていれば、歯と、顎に悪影響を与え歯列不正に繋がり、矯正治療が必要になってきます。

指の吸い方によっても違いますが、たいていは上の前歯が押し出されることで、いわゆる「出っ歯」の状態になります。指しゃぶりをやめさせる方法として、「指にからしを塗る」「針金を巻く」など強引に止めさせる方法もありますが、うまくいくとは限らず、また精神的にも好ましいものではないでしょう。

口腔習癖と不正咬合の関係

口腔習癖は歯並びおよび不正咬合(ふせいこうごう)と深く関係してきます。

不正咬合とは、歯並びと上下の歯の噛み合わせに異常があることをいい、「出っ歯」や「すきっ歯」といった症状も、不正咬合の症状のひとつです。

子供に多い不正咬合の種類は上顎前突(じょうがくぜんとつ)と言われる、いわゆる出っ歯の症状です。上の前歯が強く前に傾斜していたり、上の歯並び全体が前に出ている状態をさします。遺伝が原因のほかにも、上下のあごの発育バランスが悪かったり、下唇を噛む吸唇癖や指しゃぶりが原因だったりすることもあります。この症状は前歯で食べ物がかみづらくなり、発音がしにくくになります。この他にも、舌を歯列の間に入れて弄んだり咬んだりする弄舌癖や口呼吸などの癖でも口唇閉鎖が難しくなり、出っ歯(上顎前突)になりやすくなります。

また開咬と言われている奥歯をかみ合わせたときに、前歯にすき間ができている状態も不正咬合の一つです。これも長引いた指しゃぶりやおしゃぶりの使用であったり、舌を出したり舌を噛む弄舌癖、さらに口呼吸や、遺伝による顔の骨格が原因の場合もあります。前歯で噛むことが出来ないので奥歯の負担が大きくなり、発音もはっきりしなくなります。早い時期に癖を改善すれば、歯列の形態も改善する可能性はありますが、年月が経ってしまうと骨格性が原因の出っ歯と開咬になってしまいます。

また下唇を噛む吸唇癖の他に、上唇や上下唇の吸唇癖がある場合だと、下の前歯が上の前歯より飛び出してしまう反対咬合になりやすくなります。

その他にも、爪を噛む癖があると歯が重なり合ってデコボコした状態になってしまう叢生(乱杭歯)や開咬の原因となります。叢生は歯がねじれたり、重なり合ってでこぼこになってしまっている、歯並び問題の中でも最も多い症状です。歯の大きさに対してあごの骨が狭いために起こることがほとんどでプラークと呼ばれている歯垢が溜まりやすく、歯みがきが難しいため虫歯や歯周病の原因になります。

口腔習癖の一つである口呼吸は、鼻が詰まっていたり、扁桃腺が腫れているなどの、口輪筋が弱い方によく見られます。このお口腔周囲の筋肉バランスを崩す主な原因で、これも様々な不正咬合が関係しています。

不正咬合の2大要因は、顎の大きさや歯の大きさなどの「遺伝要因」と悪習癖や悪い姿勢、または口腔周囲筋不全などの「環境要因」とされています。日本人は欧米人と比べるとただでさえ、不正咬合になりやすい遺伝要因を持つといわれており、 悪習癖さえ改善すれば不正咬合にならないわけではありません。もし、お子様にこのような口腔習癖があれば、早期に信頼のおける大分の歯科医に相談をされることをお勧めします。

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