PICKUP
口の中の腫瘍

近年の健康ブームにより喫煙者は年々減少傾向にありますが、口腔や咽頭がんを患う人の増加は歯止めが利かず、30年前と比較して4倍以上にもなると言われています。今回は口腔ガンにつながる口の中の腫瘍についてご紹介します。

Contents

口の中の腫瘍について

口の中の腫瘍は、大きく良性腫瘍と悪性腫瘍に分けられ、それぞれの腫瘍は、発生する部位や組織の種類によって細かく分類されます。良性腫瘍には、顎骨に生じる「歯原性腫瘍」と、軟組織に生じる「非歯原性腫瘍」があります。歯原性腫瘍は、エナメル上皮腫、歯牙腫、セメント質腫、角化嚢胞性歯原性腫瘍(かくかのうほうせいしげんせいしゅよう)などが代表的で、非歯原性腫瘍には線維腫、乳頭腫、血管腫、リンパ管腫などが挙げられます。

他にも顎下腺、舌下腺、小唾液腺といった唾液腺にできる腫瘍として、多形性腺腫、腺リンパ腫などがあります。良性腫瘍の多くは、自覚症状がありません。特に顎骨にできる腫瘍は大きくなるまで気がつかない事が多く、腫れたり、細菌感染による痛みによって自覚症状が出てきたり、歯科治療中にレントゲン写真で偶然発見されることで自覚することがあります。粘膜にできる腫瘍は肉眼的に発見しやすいため、比較的早い段階で見つかることが多いです。良性腫瘍は再発が少なく転移もしないため、命に影響することはほとんどないですが、稀に悪性化する場合もあります。

一方、悪性腫瘍は、「口腔ガン」と言われ、生命を脅やかす重大な疾患で、再発や首のリンパ節や肺などに転移する可能性があります。悪性腫瘍の場合の症状は、口内炎や白斑がなかなか治らなかったり、歯がぐらつき、よく出血したり歯が自然に抜ける症状も現れます。

また口が開きにくくなったり、物が飲み込みにくくなる症状も現れ、顔、唇、顎が腫れたり唇や舌がしびれることもあります。特に白斑や口内炎に痛みやしこりがあり、2週間以上治らない場合は、かかりつけの病院を受診された方がいいでしょう。

口腔ガンの種類

口腔がんは発生する部位によって分類され、舌にできる「舌がん」、歯茎にできる「歯肉がん」、舌と歯茎の間にできる「口底がん」、頬の内側にできる「頬粘膜がん」、口の天井にできる「口蓋がん」、唇にできる「口唇がん」などがあります。これらのうち、舌がん罹患率が40%を占めると最も多く、次いで歯肉がん、口底がん、頬粘膜がんという罹患率になっています。

また、口腔がんは組織型により癌腫(がんしゅ)と肉腫(にくしゅ)に分類され、そのほとんどは癌腫のひとつである扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)と言われています。その他、癌腫には唾液腺に生じる「腺様嚢胞がん(せんようのうほうがん)」や「粘表皮がん」「腺がん」などがあり、肉腫では、顎骨に発生する「骨肉腫」が代表的です。また、全身性の悪性リンパ腫などが口腔内に発生するケースもあります。

口腔ガンの治療

良性腫瘍のほとんどは手術の対象となり、大きな腫瘍は全身麻酔が必要となりますが、小さな腫瘍であれば局所麻酔での手術が可能です。エナメル上皮腫などの一部の顎骨腫瘍では、顎骨の切除が必要となることもあり、大きなものではチタンプレートや再建手術を行う場合もあります。

また、骨腫、セメント質腫、血管腫、リンパ管腫などでは、ある一定の大きさまで増殖するとそれ以上大きくならないものがあるため、手術を行わずに経過を見て判断することもあります。悪性腫瘍である口腔がんに対する治療法は、手術療法、化学療法(抗がん剤・分子標的薬)放射線療法などがあり、ガンの種類や悪性度、進行度などを考慮し、治療法を組み合わせて行い、手術を行った後に化学放射線療法を行うのが一般的です。

その他にも免疫療法、温熱療法、レーザー治療などがあります。唾液腺に生じる腺様嚢胞癌や粘表皮がんでは、手術療法が中心となります。腺様嚢胞がんは経過が非常に長く、10年以上に渡る経過観察が必要となります。骨肉腫の場合は、手術で原発腫瘍を切除するだけでは不十分で、目に見えない微少転移を防ぐことが重要なため、化学療法と手術療法の組み合わせが一般的な治療となります。

口腔がんの手術の場合、舌や顎骨、顔面を切除するため、術後に咀嚼障害や嚥下障害、顔の形が変形するなどの後遺症を残す場合があります。

口腔がんの誘発要因

口腔がんの多くは、口の中の衛生状態が悪かったり、虫歯や義歯、口の乾燥などで舌への刺激があることが原因です。

お酒や喫煙習慣も口腔ガンを誘発する要因の一つと言われており、さらに辛い食べ物など刺激の強い食べ物も発生に関連していることがわかっています。その理由は、お酒や喫煙習慣、刺激の強いものを食べる機会が多い方は遺伝子を傷つける可能性が高く、口腔がんの発生リスクを高めてしまいます。1日に10本以上タバコを吸う方や、葉巻、強いお酒が好きな方、飲酒するとすぐに顔が赤くなったりする方は注意した方がいいでしょう。

また偏食であったり、50歳以上の方で、飲酒時にタバコも吸っている方は要注意です。

そのほかにも、歯を磨かなかったり入れ歯の掃除をしないなど、口腔内を清潔に保たないのは言語道断です。頻繁に舌や頬の粘膜を噛んでしまったり、入れ歯や歯の詰め物が当たって痛い方も口腔ガンになりやすいと言えます。一概に誘発要因があるからと言って、口腔がんになるというわけではありませんが、上記に当てはまる方は、口腔ガンを患いやすい体質であったり、口腔ガンになりやすい環境にあると考えられますので注意が必要です。

どんな病気にも言えることですが、口腔ガンにおいても、早期発見と早期治療がとても重要となります。しかし、初期段階は症状がない場合が多く、がんの発見が遅れることが多いのが現実です。早期発見するためにも、日々の口腔ケアを行い、歯科医院で定期検診を受けられることをお勧めします。

 

おすすめの記事