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ペインクリニックとは

医療の進歩により、日本は世界有数の長寿国となり、厚労省によれば日本の平均寿命は、男性が世界3位、女性が2位となっています。しかし国民の大半は、何かしらの痛みを抱えて日常生活を送っていると言われています。もともと痛みは、身体に生じた異常事態を知らせる警告として非常に大切な役割を担っています。

実際に、病院を受診する人の多くは、痛みが理由だということがわかっています。痛みは、一般的に原因となる病気の改善とともに軽減しますが、痛みを放置してしまい慢性化してしまうと、より強い痛みや新しい種類の痛みが加わり、身体的にも精神的にも影響を及ぼしてしまいます。

今回は痛みと、痛みを除去する専門診療所である「ペインクリニック」についてご紹介したいと思います

ペインクリニックとは

英語で、ペインとは「痛み」、クリニックとは「診療所」のことをいい、ペインクリニックとは、その名の通り「痛みを取り除くことを専門とする診療所」のことを言います。

痛みを我慢すると、痛みが酷くなったり、時には新たな痛みまでも招きます。このような現象を「痛みの悪循環」と言い、この悪循環に陥ると、なかなか一般の治療では改善しない場合があります。痛みは我慢せず、悪循環に陥る前に治療をすることが慢性痛とならないために必要不可欠なことです。

人間は痛みや精神的なものからストレスが発生すると、ストレスから身を守ろうとして交感神経が緊張します。交感神経が長時間にわたり緊張することで、組織の血流低下、酸素供給が不足し、発痛物質などの代謝産物が蓄積されてしまいます。発痛物質などが蓄積することで、新たな痛みを促し、さらに組織の血流低下、酸素不足を起こし痛みの悪循環が形成され、組織が損傷してしまうのです。そうなると、痛みは改善されず、長期にわたって痛みに苦しむことになり、痛みがある一定レベルを超えると、体は動かなくなり、心も沈んでしまい、鬱のように生きる意欲を失ってしまいます。

現代はストレス時代といわれており、交感神経の緊張を強いられる時代と言ってもいいでしょう。ペインクリニックは、痛みの治療、痛みによって低下した生活の質を改善し、心身共に健康で、再び社会の中でイキイキと生活できるよう総合的に治療する医療機関です。

歯・口・顔・舌に起こる原因不明の痛み

痛みは非常に不愉快で、ストレスが蓄積されるため、誰でも痛みから逃れたいと思うのは当然でしょう。しかし痛みというのは、体の異常を伝える重要な反応で、痛みがあることで、医療機関を受診し、原因を突き止めることが出来る大切な警告なのです。痛みは、体の異常を知らせる役目として大いに役立っているのですが、痛みの刺激が強すぎたり、長期にわたり続くと、今度はさまざまな弊害が起こります。痛みで医療機関を訪れる多くの理由としては、「腰椎椎間関節症」「脊柱管狭窄症」「坐骨神経痛」などの腰痛が第一位に挙げられます。その次に肩こりや首のこりの痛みを訴える人が多く、神経痛や帯状疱疹、ヘルペス、四十肩や五十肩も上位に挙げられます。

そのほかにも、歯や口、顔、舌に原因不明の痛みを抱え医療機関を訪れる患者さまも少なくありません。原因が明確である症状であれば適切な治療で完治しますが、レントゲンや検査に異常がないにも関わらず、ジンジンと痛みを伴ったりする歯痛が長期に続く非定型歯痛や、舌の先や側縁にヒリヒリする痛みが続く舌痛症、舌・唇等にじりじり焼けるような痛みが続く口腔灼熱症候群、原因不明の顔面痛が続く非定型顔面痛などの、原因不明の顔面痛は、病院を転々とし、様々な歯科治療や手術が行われ、正確な診断をしてくれる専門医に辿り着くまで平均5年もの歳月がかかるというデータもあります。それだけでなく、検査をしても異常が見つからないため、「気のせい」や「大げさ」などという判断をされることもあり、患者さまが精神的に追い込まれてしまうケースも多くあります。

これらのような「原因不明の痛み」は、脳の中の痛みをコントロールしたり認知したりするシステムに変調が起こり、脳の中で痛みが増幅されたり、勝手に作り出されているのだということが、ここ10年ほどの神経科学や脳科学の急速な進歩により解明されてきました。原因不明の慢性疼痛に対して、痛み止めは末梢神経に作用する薬であるため、脳の中でおこる痛みには効果がなく、安易に痛み止めに頼ってしまうと副作用を招く場合もあるため注意が必要です。

非定型歯痛とは?

歯痛は歯科における症状の中でも最もなじみ深い症状です。歯髄炎や歯周炎によるものが一般的で、抜歯や歯の神経を取る処置を行うことで歯痛の多くは改善するとみなされています。しかし、処置をいくら繰り返しても歯痛が続き、歯科治療後や抜歯後にも続く、原因不明の頑固な歯痛は「非定型歯痛」と呼ばれています。

歯痛や顎関節痛などの口腔顔面痛に対する治療法としては、抗うつ薬がもっとも高い効果を発揮し、服用してから5日前後で効果が現れ、約1ヵ月ほどでおよそ70%の疼痛軽減が得られると言われています。非定型歯痛の場合、抗うつ薬の副作用に対する許容度が低い傾向にあり、さらに治療反応性なども個人差が大きいため、最初はごく少量の投与から始まります。

また高齢者の場合、心気的な傾向が高まり、さまざまな身体的愁訴を繰り返すこともあるため、治療導入や服薬の継続が困難な場合には、補助的に心理療法も併用して行います。患者さまの脳内で起こっている神経回路の機能障害をしっかりと推察し、副作用などにも適切に対処するには、相応の知識と経験に基づいた判断力が必要だと考えます。

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