噛む力をコントロールする時に、重要な働きをしているのが、歯の周りにある「歯根膜」という部分です。食事の時に噛む力は、柔らかい食べ物で30kg位、硬い食べ物であればその倍の力がかかっていると言われており、人は自然と噛む力の強弱をコントロールしているのです。
今回は「歯根膜」についてご紹介したいと思います。
歯根膜とは
歯根膜とは、歯槽骨(歯を支えている骨)と歯根との間にある薄い膜のことです。歯の靭帯とも呼ばれ、コラーゲン線維が役半分を占める厚さ0.3㎜位の組織です。
歯根膜は、歯と歯槽骨を強固に結びつける役割の他に、触覚や痛覚といった感覚があるので、噛んだ時の硬さや微妙な感触、刺激を感知して、歯に伝わる咬合力を調整する役割も担っています。この感覚はとても鋭く、髪の毛一本でもすぐにわかる程で、食感を楽しめるのもこの歯根膜の働きのおかげというわけです。噛む力が働くことで歯はかなりの衝撃を受けますが、この歯根膜がクッションのような役割を果たし、歯や骨を守ってくれているのです。健康な歯であっても、指で触ると揺れるのはこの歯根膜の機能のが働いているため異常ではありません。また矯正歯科治療ができるのも、この歯根膜がのおかげなのです。
歯根膜炎とは?
噛むと痛いが、原因がわからない・・ということがあります。特に虫歯がある気配もなく、歯科医院へ行くべきか悩むこともあるでしょう。歯根膜は敏感なので、炎症を起こすと、急性の場合、噛むと痛みを感じたり、歯が浮いたように感じる症状が現れたりもします。実はこれらの症状は、歯根膜炎による痛みのことが少なからずあり、自然に痛みが引くことはありません。
歯根膜炎とは歯髄炎(虫歯が進行し歯髄にまで達する炎症)の原因となっている細菌が歯根膜や歯の骨の一部にまで感染し、炎症をおこす病気です。さらに感染が進めば、炎症は歯の根の先から周囲の組織やアゴの骨にまで広がります。歯はアゴの骨に立っていられずグラグラし、ズキズキと激しく痛みを伴います。歯の根の周囲には、白血球の残骸が膿となってたまり、歯ぐきが腫れることもあります。またアゴの下のリンパ節が腫れて、押すと痛みを感じ、さらに頭痛や発熱を伴うケースもあります。痛みは歯髄炎に比べると、一般的にやや軽いですが、持続的、且つ痛みの変化はあまりないでしょう。
慢性になると自覚症状があまりなく、歯が浮く感じや、噛むと痛みを感じる程度ですが、放置しておくと歯根先端の骨が破壊されたり、肉芽腫が出来たり、歯茎が膿んで骨に穴があき、膿が出たりもします。また、歯根膜炎があるためにリウマチ熱、急性腎炎、化膿性関節炎、心臓弁膜症などの病気までも引き起こしてしまうこともあり、これを「病巣感染」と呼んでいます。歯根膜炎の原因は、歯周病や睡眠中の歯ぎしり、食いしばりが原因であったり、打撲や転倒などの外的要因で歯に強い力が加わったことが原因で歯根膜炎が起こるケースもあります。歯周病や歯ぎしり、食いしばりが原因の場合、歯に外見上の変化が見られないのでご自身ではなかなか気付きにくいかもしれません。特に歯周病が進行し歯槽骨が破壊されると、必然的に歯根膜も失ってしまうことになります。したがって、歯根と歯槽骨をつなぐ組織が無くなるため、歯はぐらつき、最終的には歯が抜けてしまいます。
打撲などが原因で起こる歯根膜炎の応急手当
歯が痛む原因は、大きく分けて歯髄炎と歯根膜炎の2つが考えられます。
歯根膜炎の場合、歯が浮いたような感覚になり、歯髄炎と同じような重苦しい痛みが続きます。歯根膜炎の原因となっている歯を叩くと痛みがあり、冷たい水を口に含むと一時的に痛みが和らぐ場合があります。打撲が原因で歯根膜炎を引き起こしている場合は、冷水を口に含むか、ガーゼなどで歯茎をよく拭いて清潔にしたあと、消毒液をぬるといいでしょう。
しかし虫歯の穴に歯痛用の薬剤を塗布したり詰めないようにしてください。より腫れが酷くなったり、痛みが増す場合があります。
その他にも、頬の外側から冷やしたり、冷湿布を貼ったりするのもいいでしょう。温めた方が痛みが和らぐようであれば温湿布をしてもいいです。しかし、直に頬に当ててしまうと肌を傷めてしまう可能性があるので、タオルなどに包んでから肌に当てるようにしてください。もしくは、冷水で絞ったタオルで冷やすようにして直接触れないようにしてください。夜間など病院に行けない状況の場合、歯髄炎か歯根膜炎かによって、家庭で行う応急手当は変わってきますが、応急手当で痛みが消えても絶対に放置してはいけません。また再発したり、さらに病状が進行してしまいますので、出来るだけ早急に歯科医院で治療を受けるようにしてください。
いかがでしたか?歯根膜炎になる原因は、虫歯菌や歯周病菌、歯ぎしりによる炎症であったり、外傷よる炎症とさまざまです。
虫歯や歯周病に関しては、日頃からの歯や歯茎のセルフケアが大切だと考えます。自分では気づかないうちに虫歯になっていたり、歯周病が進行していたりするので、歯科医院で定期検診を受けることは大変お勧めです。定期検診を受けることによって早めに虫歯や歯周病が発見でき、またブラッシング指導を行なってもらえば、日頃の磨き残しが起きている箇所も把握することができます。歯ぎしりが原因で炎症が起きている場合は、マウスピースの装着を推奨します。歯は健康を維持するのに欠かせない、一生涯使う大切なものです。ご自身で大切な歯を守っていくためにも大分県の歯科医院を受診されてみてはいかがでしょうか?